

2020年10月の建設業法改正により、建設業許可の新規取得や更新の際に「適切な社会保険に加入していること」が必須条件となりました。これは、建設業界で長年問題となっていた「社会保険未加入企業」の排除と、技能者の処遇改善を目的としています。
建設業許可で求められる「社会保険」は、主に次の3つです。
健康保険・厚生年金保険
法人であれば、社長一人だけの会社でも原則として加入義務があります。個人事業主の場合は、常時5人以上の従業員(家族従業員を除く)を雇用している場合に加入義務が生じます。
雇用保険
法人・個人を問わず、労働者を1人でも雇用していれば加入が必要です。ただし、週20時間未満の短時間労働者や、31日未満の雇用見込みしかない日雇い労働者などは対象外です。
労災保険
労働者を1人でも雇えば必ず加入が必要です。社長本人や一人親方は「労働者」ではないため原則加入できませんが、事務組合を通じた「特別加入制度」を利用すれば補償を受けられます。
 一人親方や役員のみのケース
法人で役員のみの場合は健康保険・厚生年金には加入義務がありますが、雇用保険は原則対象外です。一人親方の場合は国民健康保険と国民年金に加入するのが基本ですが、実態が「労働者」と判断される場合は、元請企業の社会保険に加入すべきケースもあります。
建設業許可の申請や更新では、社会保険加入状況を証明する資料の提出が求められます。
健康保険・厚生年金 保険料納付書や領収証の写し
雇用保険 労働保険番号が確認できる申告書や領収済通知書の写し
労災保険 労働保険料の申告書や領収書
許可更新の際に「未加入」と判定されると、是正指導を受け、改善しなければ許可が切れるリスクがあります。建設業許可における「適切な社会保険の加入」とは、単に形式的に加入しているだけでなく、事業形態や従業員数に応じて正しく保険を適用し、証明できる状態にしておくことが求められます。